野村望東尼終焉の宅 (7 画像)
野村望東尼は1806(文化3)年9月6日、福岡藩士浦野重右衛門の三女として生まれ、その名を「もと」と称した。24歳の時に野村新三郎貞貫の後妻として迎えられ、夫婦共に和歌をたしなみ、54歳で夫に病死されると博多の明光寺で髪をおろし、禅尼となった。
1861(文久元)年、京都に上った望東尼は、尊王攘夷運動に接して勤王の志を高くし、帰郷後は勤王の志士たちとの交流を一層深めた。1865(慶応元)年黒田藩による勤王派への弾圧により姫島に流れたが、翌年高杉晋作によって救出され、潮の席にかくまわれた。
1867(慶応3)年薩長連合の討幕軍東上のことを聞くと、望東尼は三田尻の歌友荒瀬ゆり子宅に身を寄せ、7日間防府天満宮に参詣し、断食をして、和歌一首を手向け（後記）、討幕軍の戦勝を祈願した。しかし老齢の身に7日間の断食はあまりにも過酷で、間もなく病に倒れ、同年11月6日に62歳の生涯を閉じた。

一日目　　武夫（もののふ）の　仇に勝坂　越えつつも　祈るねぎごと　うけさせ給え
二日目　　濃染（こそめ）なす　ます穂のすすき　穂に出て　招くになびけ　千草八千草
三日目　　御世を思う　やたけ心の　一筋も　弓取る数に　入らぬかひなさ
四日目　　あずさ弓　引く数ならぬ　身ながらも　思ひいる矢は　唯に一筋
五日目　　道もなく　乱れあひたる　難波江の　よしあしわくる　時やこの時
六日目　　唯七日　我が日まゐりの　果てなくに　神無月とも　なりにけるかな
七日目　　九重に　八重居る雲や　はれむとて　冬たつ空も　春めきぬらむ

望東尼が防府滞在中に住んだ荒瀬家の離れは、今は桑山東麓の大楽寺の下に移されて「終焉の宅」として、また旧宅は「宅跡」として、桑山の墓と共に、県の史跡に指定されている。

・山口県防府市岡村町5-3

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